ヨーガ・スートラ4-1(独存位章)

[超自然的能力についての補足]

【4-1】 上来説いてきた種々の超自然的な能力は、ある生まれつきによって、あるは薬草の力によって、あるは真言をとなえることによって、あるは苦行を行ずることによって、さらには三昧に入ることによって生ずる。

Supernatural powers (siddhis) arise from birth, drugs, mantras, austerity, or yoga (samadhi) ||1||

 

<解説>この一経は第三章の中にあるべきものである。ヨーガ・スートラの編纂がかなり形式的なものであったということの一つの証拠である。真言(mantra=マントラ)というのは、もとはヴェーダの本文のことであったが、後には、呪文としてとなえられる文句を意味するようになる。「オーム」の如きもマントラの一つである。ヨーガの中で、この真言の適用に重大な意味を付加する方向に発達したのが、マントラ・ヨーガ系の宗教は、インド宗教の発達の極限であると同時に、呪法宗教という原始宗教形態へ退墜する危険をはらんでいた。