ヨーガ・スートラ2-55

[2-55] 制感の行法を修習してゆくならば、ついには諸感官がに最高の柔順さが生ずる。

Thus do you gain superme mastery of your senses. ||55||

 

<解説>①感官の柔順さ(vasyata)ということは、いろいろな面から考えられる。ある註釈によれば、感官の柔順さとは、感官がたとえ外界の対境の方へふり向けられても、そちらの方へかけよらないことである。また一説では、主観の方に愛着等の煩悩がなくなった結果、声などの対境にふれても一向に快、苦を感じない状態だ、という。特に最高の柔順さという時は、心が専念状態(ekagrata)にある時、感官もまた外部の知覚をうけつけないことを意味している。最後に、心のはたらきが完全に止滅された時、感官のはたらきもまたこれに追随して消滅することになる。

 

<解説>②以上禁戒から始めて制感に至るまでの五部門はヨーガ外的部門(bahir-anga)とよばれる。この五部門は、次第にのぼりの段階をなしていて、禅定三昧の心境を漸次にもりあげてゆくが、しかし未だヨーガの本命をなす部分ではない。ヨーガ行の本命は、これから述べる三つの部門にある。これまでの五部門は外部的条件をととのえる準備段階に過ぎないのである。