ヨーガ・スートラ2-50

[2-50] 調気は出息と入息とからなり、空間と時間と数とによって測定され、そして長くかつ細い。

Exhalation, inhalation, retention, technique, time and number must be very precisely regulated over a lengthy period. ||50||

 

<解説>①出息、入息、保息という訳語は実は便宜的なものである。原文では、外部へ向かうはたらき(bahya-vrtti)内部へ向かうはたらき(abhyantara-vrtti)停頓するはたらき(stambha-vrtti)を有する、となっている。この三つのはたらきを、ただちに出息(recaka=レーチャカ)、入息(puraka=プーラカ)、保息(kumbhaka=クムバカ)に充てることが妥当であるかどうかは問題である。作者は気息のことをいっているのではなくて、生気のことを言っているのではないかと思われる。

 

<解説>②空間によって測定するというのは、例えば出息の時には、鼻のさきに下げた軽い葉片または綿毛がどれだけの距離で動くかを調べるとか、入息の時には、かかとから頭頂に至る間のどこかで、蟻の這うようなむずがゆさが起こることによって測定するとかすることである。時間によって測定するというのは、クシャナ(ksana)やマートラー(matra)などの時間単位を以て気息の長さを測定して、標準の長さにそろえること。クシャナ(刹那)は瞬きするのに要する時間の四分の一の長さの時間(3-52参照)、マートラーは、まず手のひらで膝小僧を三度さすった後で、拇指と人差し指とでバチッと音を立てるのに要する時間の長さである。数を以て測定するというのは、呼吸の回数を以て気息の上昇(udghata)を測定することをいう。

 

<解説>③例えば、初級の気息の上昇には、三十六呼吸を以てするというようにである。気息の上昇というのは、気(vayu=ヴァーユ)が鼻のつけ根の処から押し上げられて、頭に突きあたることをいう。そのわけは、健康人の一呼吸の時間は一マートラーの長さであるからである。この原文はどうも充分に理解しつくされているとは思えない。註釈家の見解は後世のものであるし、その見解の間に不一致な点がある。調気の法は今日同様、直伝による点が多かったのであろう。調気法は、その後益々発達して、ハタ・ヨーガの中心的な行法となる。