ヨーガ・スートラ2-53

[2-53] その外、意がいろいろな凝念に堪えられるようになる。

And the mind develops the capacity for harmony with thoughts (dharana). ||53||

 

<解説>調気の第二の結果を述べている。この経文の内容は1-34に説くところと、主旨において一致する。意(manas=マナス)はインド心理学で根(インドリア)「心理器官」の一つに数えられている。というのは、意は他の十の感覚、運動の器官と結んではたらく場合が多いからである。意の機能は思惟(samkalpa=サンカルパ)であるといわれる。ここで思惟というのは、思考作用と意思作用とを兼ねた心理作用である。注意の作用もまた意に属している。だから凝念(dharana=ダーラナー)をはじめとする心理操作はすべて意のはたらきによってなされている。意と凝念との関係は古くはカタ・ウパニシャッドの中にも出ている(佐保田鶴治『インド正統派哲学思想の始源』創文社384頁以下参照)。凝念については3-1で説明される。