ヨーガ・スートラ2-31

[2-31] これらの禁戒が、身分、地域、時期、習俗などの制限なく、またどんな心の状態においても守られる時には、大誓戒とよばれる。

Showing respect for others without regard for social station, or for place, time, or circumstance in all spheres of this respect is a great virtue, ||31||

 

<解説>一般社会においても、これらの戒は条件づきで行われている。たとえば、第一の非暴力すなわち不殺生戒についていうと、インドの習俗で、漁夫は魚だけを殺して、他のものは殺せない(身分上の制限)とか、一般に月の第十四日と聖日には殺生しない(時期の制限)とか言ったように、条件づきで不殺生戒が守られる。かような、条件づきでない誓戒が大誓戒(mahavrata=マハーヴラタ)といわれる。

 

<解説>②誓戒(vrata=ヴラタ)というのは宗教的な義務のことである。大(maha=マハー)という語には普遍的という意味がある。五戒は普遍的、無制約的に順奉せられた時に、単なる世俗の道徳ではなくて、解説の原因の一分として宗教的意味をもってくるのである。このことは仏教の四無量心の無量とか、六波羅蜜の波羅蜜(無極)とかいう語の意味する無制約性についてもいえるのである。どんな心の状態においても(sarvabhauma=サールヴァーウマ)という語は、「どんなものを相手にしても」の意味に解する註釈家もいる。