ヨーガ・スートラ2-1(禅那章)

【行事ヨーガ】

[2-1] 苦行、読誦、自在神への祈念の三つを「行事ヨーガ」という。

Practice characterized by rigor and vigilance toward itself, without attachment to the outcome, is known as kriya yoga. ||1||

 

<解説>①行事ヨーガ(kriya-yoga)とは、日常の行事として行なうヨーガのことである。行事ヨーガは本命のヨーガではない。ヨーガ・スートラの立場すなわちラージャ・ヨーガからいえば、ヨーガの本命は、第一章で説いたように、心のはたらきの止滅という心理的な修練にある。行事ヨーガは、その心理的修練にたえられる心理的条件を作り出すためのもので、ヨーガの予備的段階に属している。

 

<解説>②苦行というタパス(tapas)は語源的には「熱」という意味である。非常に古い時代から使われた語で、もとは身体を太陽や火で熱したり、労したりして、熱を生ずることから来た語である。身体を熱することによって忘我恍惚の状態をひき起こすことを狙ったのが、苦行の流行した理由である。しかし後にはタパスは、断食その他の肉体的苦行を含む広い意味を持つようになる。

 

<解説>③ヨーガでは苦行は、人間の心にひそんでいるけがれを去るのに必要な行事とされている。しかし、ヨーガにとっては、苦行はあくまでも三昧に至るための準備にすぎないのであるから、極端な苦行に耽けるヨーギーは異端邪教の徒である。

 

<解説>④ヨーガの道を深く理解したE・ウッド氏(Ernest Wood)がタパスをbody conditioning(肉体的条件付け)と訳したのは正しい。読誦(svadhyaya=スヴァダヤーヤ)というのは聖典を声を出して読むことであるが、前にも述べたような(1-27,1-28)聖音(pranava)を反復して誦唱する(japa)のもこのうちにははいる。自在神への祈念いついては、すでに説明した(1-24,1-25,1-26参照)。この三つの行事ヨーガについては、後にもふれる機会がアル(2-32,2-43,2-44,2-45参照)。