ヨーガ・スートラ1-33

 【心の静澄を得る方法】

[1-33] 慈、悲、喜、捨はそれぞれ他人の幸、不幸、善行、悪行を対象とする情操であるが、これらの情操を念想することから、心の静澄が生ずる。

All that in mutable in human beings (chitta) is harmonized through the cultivation of love (maitri), helofulness (karuna), conviviality (mudita) and imperturbability (upeksha) in situations that are happy, painful, successful or unfortunate. ||33||

   

<解説>①慈、悲、喜、捨の四つの情操は仏教で四無量心とよばれるものである。その中で慈(maitri=マーイトリ)は他人の幸福をともに悦ぶ心、悲(karuna=カルナー)は他人の不幸をともに悲しむ心、喜(mudita=ムディター)は他人の善い行為をともに慶賀する心、捨(upeksa=ウペークシャー)は他人の悪い行為に対して憎悪も共感も抱かない心である。これらの情操または心術を、ケース・バイ・ケースに念想の対象として、その心をくり返し、くり返して思い浮かべ、それのイメージがハッキリと心の中に形を結ぶようにする。

 

<解説>②この念想を行うことによって、これらの心術の逆の悪い心術は次第に起こらなくなるが、それだけでなく、三昧に必要な静かで澄みきった心が現われてくるのである。ヨーガの行者にとっては、心の静澄(prasada=プラサーダ)が生ずることが主たる願いである。仏教でも、四無量心は十二門禅の中の一つとしてあつかわれている。