ヨーガ・スートラ1-31

[1-31] 苦悩、不満、手足のふるえ、あらい息づかい等が心の散動状態に伴っておこる。

Suffering, depression, nervousness, and agitated breathing are signs of this this lack of clarity. ||31||

 

<解説①>苦悩(duhkha)は肉体、精神の苦しみを併せて意味する。不満(daurmanasya)とは、欲求がはばまれた時に生ずる興奮の心理のこと。あらい息づかい(svasa-prasvasa)の原語はただ入息と出息の意味であるが註釈家は、三昧に入ろうとする人の意思に反して、息を吸ったり、吐いたりする衝動が起こることで、三昧を妨げる発作の意味に解している。三昧の行中においては、静かで長い規則正しい呼吸を必要とするのであるが、心が乱れている時は、呼吸は不規則となりがちである。

 

<解説②>ヨーロッパのある学者の説によると通例のヨーロッパ人の呼吸は長短不規則な上に、1分間に30回もなされるという。ヨーガで呼吸の練習をするのは、瞑想に適する呼吸の習慣をつけるためである。呼吸の乱れと心の散動とは相伴っているから、呼吸を調えなければ、心を落ち着かせることはできないのである。