ヨーガ・スートラ1-16

[1-16] 離欲の最高のものは、真我についての真智を得た人が抱くもので、三徳そのものに対する離欲である。

The highest state of imperturbability arises from the experience of the true self; in tihs state even the basic elements of nature lose their power over us. ||16||

 

<解説>①離欲には上下の種類がある。一般に、見たり聞いたりした事柄についての離欲は低い段階の離欲である。低い離欲は、真智を得るための補助手段になるし、その相応の善い結果を生むことはできる。

 

<解説>②しかし、最後の目的たる解脱を得るためには、修行によって真我は自性(prakrti=プラクリティ)とは全く別個のものであるという真智(purusa-khyati)に到達した後、自性の構成要素である三徳(グナ)すなわち三種のエネルギーそのものに対してさえ、離欲の自覚をもたなければならない。

 

<解説>③つまり、客観的世界の根源のさかのぼってまで、これを拒否し、克服して、自己の主体性を自覚的に確立し得た時に、はじめて真我独存という至上の境地に立つことができるというのである

 

<解説>④経文3-49~50では、覚(ブディ)と真我(プルシャ)とが別個のものであるという真智を得た行者は、宇宙万有を支配し、見とおす力を得るが、そんなものに対してまでも無欲となった時に、始めてあらゆる弱点を消尽して真我独存の境地に達することができる、と説いている。