ヨーガ・スートラ1-1、1-2(三昧章)

これから、パタンジャリ作と伝えられる『ヨーガ・スートラ』を、佐保田鶴治先生の解説本で紹介します。

ヨーガ・スートラは以下の4つの章よりなる。

 

1・三昧章 Samadhi-Pada

2・禅那章 Sadhana-Pada

3・自在力章 Vibhuti-Pada

4・独存位章 Kaivalya-Pada

 

第1章「三昧章」

[1-1] これよりヨーガの解説をしよう。

Yoga in the here and now: an introduction to the study and practice of yoga||1||

【ヨーガの定義】

 

[1-2] ヨーガとは心の働きを止滅することである。

When you are in a state of yoga, all misconceptions (vrittis) that can exist in the mutable aspect of human beings (chitta) disappear.||2||

 

<解説>①心のはたらきについて、1-6には次の5種類をあげている。

1正しい知識

2誤った知識

3観念的知識

4睡眠

5記憶

 

<解説>②これらの心のはたらきを抑止して、消滅させる心理操作がヨーガである。ヨーガ心理学で心(チッタ)というときは、深層心理を含めた全ての心理の根源であるものを意味する。仏教では心(チッタ)は心王と訳されている。

 

<解説>③心(チッタ)の心理学的、哲学的意味については、さきに行って追々と明らかになる。心とそのはたらきとの関係はヨーガ思想では、実体とそれの現れの関係、例えば、湖の水と波のような関係として考えられている。

 

<解説>④止滅(ニローダ)というのは、心(チッタ)のはたらきであるいろいろな心理過程を抑止し滅ぼしていく心理操作のことであるが、同時に、すべての心理作用が消滅してしまった状態をも意味する。

 

<解説>⑤ここでは、止滅は三昧(サマディ)、ヨーガの同義語として用いられているが、三昧とヨーガに有想(うそう;心理作用が残っているもの)の二段階があるうち、無想の段階が特に止滅と呼ばれている。

 

 

<解説>⑥このニローダ(止滅)という言葉は仏教的な匂いを持っている。